【書評】銃・病原菌・鉄 ジャレド・ダイアモンド

ずっと読みたかった、ジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」。

骨太かつ知的好奇心をくすぐる一冊🙌

 

この本で最も強く主張されているのは、

「歴史を形作る上で、最も影響を及ぼしているのは環境的要因である」

ってことですね。

 

もちろん文化的特異性、個人の資質も影響を与えていますが、ワイルドカードに過ぎないと。

 

・食料生産は世界最大の発明

 

ヨーロッパが他の地域に比べて先進国となったのは、食料生産が必要とされ、実際に行われた土地であったから。そのための環境を整えるために社会システムが発達。食料が生産できるようになったことで、社会システムが複雑となり、争いが起き、武器をつくり、”力”をもつことにつながりました。食料生産(農作物の栽培・家畜の飼育)を始めたことは人類にとってすごく大きな出来事だな、と腑に落ちました。

 

・作物・技術の伝播は横に早く、縦に遅い

 

緯度が同じ地域は気候・環境が似通っており、伝わってきた作物・技術を根付かせやすいようです。経度が同じでも、緯度が異なると環境が全く違うので、作物や技術を受け入れにくいそうです。先進国が北半球に多く、発展途上国が南半球に多いとされる、現在の「南北問題」も地理学的な根拠があるのかもと思いました。

 

・物事の認知の枠組みは人類共通

 

言語学徒(言語学専修の学生の愛称)としては、それぞれ別々の場所でつくられた文字の発明プロセスが全く同じだったということも非常に興味がそそられました。

認知言語学を勉強しながら感じますが、人間の認知の捉え方は人類共通ですね。

 

また、改めて日本語について考えてみると、どうして漢字を取り入れた上で、ひらがなとカタカナの2種類の表音文字を生み出したのかなと思いました。

 

漢字はもちろん中国から模倣したもの。それを拝借しつつ本来の日本語の発音に合うように表音文字を生み出したのはわかるのですが、どうしてひらがなとカタカナの2種類が必要だったのでしょうか?

 

んーカタカナの存在意義がわからない...。卒論のテーマで研究してみたいです笑

 

・病原菌が征服の歴史をつくった

 

タイトルにもあるように病原菌が歴史に与えた影響についても言及されています。

そもそも病原菌の大半は、家畜である動物から人間に感染するようになったもの。

スペイン人がインカ帝国を侵略した際、銃に倒れるよりも病気で亡くなった原住民が多かったそうです。食料生産を行い、家畜由来のウイルスに免疫を持っているヨーロッパ人がウイルスを持ち込むと、全く免疫をもたないインカ帝国の人々がばたばたと倒れていったそうです。

逆に、家畜をもたず狩猟採集で生きていたインカ帝国の土地には、伝染病は存在せず、侵略したヨーロッパ人の方は何事もなかったようです。

 

上下巻合わせて1000ページ超! 

多角的な視点でひとつの物事を考える契機となった一冊でした🙌

おすすめです✨