【書評】サピエンス全史 ユヴァル・ノア・ハラリ
サピエンス全史、読了しました。
以前読んだ「銃・病原菌・鉄」とのテーマ性が似かよっており、異なる視点から人類史をたどることができて楽しめました🙌
ホモ・サピエンス史における人類の営みを大きく変えた三大革命はこちら。
・認知革命
・農業革命
・科学革命
・認知革命
人類は、ホモ・サピエンスの他にも多数存在していました。しかし、ある時期を境にすべて他の種族は絶滅し、今ではホモ・サピエンスのみ。
さらには、ホモ・サピエンスが進出した大陸では、動物たちはことごとく大量絶滅に見舞われた歴史が存在します。
では、ホモ・サピエンスの何が他の種族や動物に比べて突出していたのでしょうか?
それは、「虚構を生み出す能力」
動物でも鳴き声を使って危険を知らせることができます。
単なる事実を伝える言語能力はサピエンス独特の能力ではない。
しかし、ホモ・サピエンスは全く存在しないものについての情報を伝達・共有できるようになったおかげで、集団で協力体制を築くことができるようになりました。
ひとつの虚構を共有することで、個体では力の弱いホモ・サピエンスが、集団として結束し大きな力を持つことができるようになりました。
宗教や国家、会社、人権は私たちは存在していると「信じている」だけで、実は想像上の産物。
考えればすぐに分かりますが、普段の生活でこれらはあたかも「存在する」かのように振る舞っているので改めて事実を突きつけられてはっとしました。
そして、これも当たり前ですが「人間は何も特別ではなく、もとは動物の一種に過ぎない」のだなということも実感。
・農業革命
食料を生産することをはじめたことも、人類の生活様式・思考を大きく変えました。
その日暮らしだった狩猟採集民族も、農業を営むことでより長期的に未来を考えるようになりました。
食料生産を中心とする生活をすることで数が増えたサピエンスは、社会という想像上の秩序を構築して、より効果的に協力し、生活を安定させようとしました。
ここで重要なことは、想像上の秩序は「正しい」のではなく、それをみなが信じれば効果的に協力できるかどうかが要であるということ。
想像上の秩序の特徴としては以下の3点。
1.想像上の秩序は物質的環境・生活様式に反映されている
個人主義を重んじる社会で育ってきた人々は、自分が「個人」であり、自分に真の価値は自分自身が規定すると信じます。
しかし、もしあなたが中世の貴族として生まれれば、人の価値は社会のヒエラルキーにおける立ち位置や他者からの評判で決まると信じるでしょう。
どちらが客観的に正しいかに関係なく、環境によって人の価値観は無意識に刻まれるものです。
2.想像上の秩序は欲望を形作る
「自らの心に従うように」と言いますが、その心から発せられる欲望は自分の今いる環境の枠組みの中にとどまります。
現代人なら、お金がほしい、旅がしたい、良い仕事につきたいなどが浮かんでくるだろうし、古代エジプト人ならピラミッドをつくりたいと思うでしょう。
3.想像上の秩序は共同主観的である
想像上の秩序は多くの人の間で共有されています。
一個人が信念を変えても死にさえしても、なくなることはありません。
法律、貨幣、神々、国民も多くの人の間で共有されている想像上の秩序です。
また、マルクスが死んでも社会主義という虚構は、今なお多くの人の中にはびこっています。
・科学革命
科学革命によって、大きく変化したものの中に時間感覚があります。
農業を営んでいた時代は、自然の時間サイクルに合わせて生活していました。
ところが、人間の営みの中心が農業から産業へ移行すると、時間表と製造ラインが人間のほぼあらゆる活動のテンプレートとなりました。
それに合わせて電車は時間通りに来るようになり、会社には定時で出社しないといけなくなったのです。
考えたこと
・存在しないものについて語る能力が人間の生活を変えたという指摘は目から鱗。
・想像上の秩序は客観的な正しさより、それを信じることによる効果が大事。
宗教、社会体制における問題でも正しいかにこだわるのではなく、それを信じることによる影響に目を向けよう。
・人種間、男女間の差別は想像上のヒエラルキー。
今の時代でいえば、貧富の格差も想像上のヒエラルキーでは?
「貧しい人は努力していないから自業自得」という考え方は正しくない。
貧しい人は貧困の負のフィードバック・ループにはまりこんでいて、機会を逸しているだけ。だからこそ、負のループからの抜け道、セーフティ・ネットをつくることが重要。
おそらく自業自得論は、数十年後には「黒人は人種的に劣っているから白人に支配されて当然」という考え方くらい古くさい考えになってるはず。
社会の荒波に飲み込まれる前に、「それはすべて人間の想像上の産物だよ」と突きつけられた感覚を得られました。この前提を意識しているかどうかで、「幸せになるならこうすべき」というような社会のレールにがんじがらめにならない気がします。笑
この本の中で出てきた「あたらしき新世界」というディストピア小説が気になったので、また読んでみたいと思います💓