ヒンドゥー教・ヨガの思想からみるオーロヴィル

南インドの小さな村オーロヴィルは、インテグラル・ヨガの思想をもとに「人類の和合」を目指した国際都市です。創始者であるオーロビンドとマザーの思想の基盤となった、インドのヒンドゥー教&ヨガの思想を整理し、オーロヴィルについて考えました。
 
ヒンドゥー教の世界観・神様たち】
天地創造は、始まりがなく、終わりもない。
4億320万年周期で、宇宙の作りかえが行われる。
Kalpa(4億320万年)が終わるとき、新しい宇宙の創造が行われる。
最後の年に既存の宇宙は破壊される。
 
Brahma(創造者)は、究極の神。音の形をとって現れる(OM =the absolute絶対的という意味)
 
ヒンドゥー教は、いつの時代も社会体制の変化を受け入れ、教えを変化させてきた。
 
すべての宇宙はブラフマンの手の内にある。形あるすべての生命はひとつのエネルギーの源(the Universal Spirit)から進化してきた。
 
Sat-chit-Anandaともいう。
(Existence/Being)-(Consciousness/Pure intelligence)-(Bliss/Pure joy)
 
Brahma=宇宙の創造者( The Creater of the Universe)
Vishnu= 宇宙の維持者(The Preserver ) =宇宙の秩序を維持
Shiva=宇宙の破壊者(The Destroyer)=dance depicting cosmic energy
ダンスをすることで宇宙のエネルギーを吸い取ってしまう
 
Ganesha=Shivaの息子。魔除けの神様(The remover of the obstacle)
見た目がゾウさんなのは、「見かけの美しさは内面の美しさや精神的な高みとはなんの関係もないこと」を示唆するためらしい。
 
ヒンドゥー教の特徴的な思想】
Samsara(輪廻転生) reincarnation
=生死を繰り返す循環
生の極みに到達した魂だけがBrahmanと一体になり、そうでない魂はまたこの世に生まれなおす。
 
完璧な神がいるのになぜこの世に不平等があるのか?
→不平等はその人自身の前世の行いの結果であるから。世に生を受けた時点での自分は、過去の自分の結果である。
 
Karma(因果応報)=the law of cause and effect
”As we sow, so shall we reap” 種をまいたら収穫できる
 
カルマの3つの段階
①Prarabdha Karma…自分の意思で変えられない×
生まれる身体や魂。前世での行いによって先に決められている。
②Samchita Karma…変えられる◎
すべての過去生の行いの蓄積。特徴、傾向、関心、性格等。
③Agami Karma…変えられる◎
今世での未来や来世に影響する、現在の生での行い。
 
 
Dharma(社会的な徳)
自分に科せられた正義や義務を行うこと。
積むべきダルマは人によって違い、年齢に応じて変わる。
宗教的な義務は他の宗教にもあるけど、個人差や年齢差があるのはヒンドゥーの特徴!
ダルマを極めることによってのみ、世界において社会的な調和と平和が実現する。
Adhama(正義を拒否する)に走ることは、争いや不調和、バランスの不均衡を生む。
インドのことわざ
”Dharanat Dharmah”
=Dharma sustains the world and it’s that which holds the world together.
 
ヒンドゥー教の”自分の行いは自分に(Karma)、そして他者や世界全体に影響を与えている(Dharma)”という考え方は魅力的。
 
The Caste System(カースト制度)
Indo-Aryansがインドを侵略した際に、Dasasと呼ばれていた原住民を底辺層だが、社会の一員として定義したことにはじまる。
カーストは主に4つの階級に分かれる。
①Brahmanasー先生、宗教者
②Kshatriyasー戦士、為政者
③Vaishyasー商人
④Sudrasー肉体労働者、農家
The jatis…カースト制には入らないが重要な階級。普段は本業(機織り屋、商人)だが、領地の警備に従事する。この階級は、移動の自由が許されていない。
The untouchable…もともとはカーストのルールを破った人。または、神聖とされる牛の肉を食べた人等もこの階級に落とされる(?)
 
The untouchableの存在は、ヒンドゥー教からの宗教的な奨励は全くない。為政者によってあとづけされたもの。上流カーストが汚れ仕事(清掃、ゴミ処理など)をやらせるために導入した、社会的な慣習である。
 
むしろ社会的な慣習を支えるために、カルマの宗教的思想が使われたと捉えるのが自然かな。
 
人生の4つのステージ
Brahmachari(student)
Grihastha(House Holder)
→Charityは重要。10分の1を寄付しないといけない。
また、Hospitarityも大事。
客に十分なもてなしをするまで、ごはんを食べてはいけない。
Vanaprastha(retire to the forest)
Sanyasi(give up all wants, no needs, money, renounce the world)
 
ヒンドゥー教Samsara(輪廻転生)のゴールは、完全な魂となり、神と一体化して、輪廻転生から抜け出すことだと記した。
 
そのゴールを目指す道、方法論こそがヨガである。
 
日本だと、部屋の中で女性がポーズとってるイメージが強いのだが….。それだけではなく、日々の行動の心得を含めて神との一体化を目指す道すべてをヨガと呼ぶ。
 
ヨガを極めるには8つのステップ(アシュタンガ)がある。
 
【日々の社会的・個人的行動規範】
まずは日々の行動を誠実に送ってはじめて、スタート地点に立つことができます。
 
①Yama 日常でやってはいけない5つの行い
非暴力・不殺生→ベジタリアニズムもこの一種とされてる
ウソをつかない
盗まない
禁欲・無駄なことに体力・精神力を消耗しない
貪欲さを捨てる
 
②Niyama 日常で行うべき5つの行い
清潔さを保つこと
足るを知ること
自制心をもつこと
自ら学習すること
信仰心をもつこと
 
【ヨガの基本となる3つの要素】
③Asana(姿勢)…瞑想を深めるための坐法。
④Pranayama(呼吸法)…瞑想を深めるために呼吸を整える
⑤Pratyahara(感覚の制御)…外側に向いている五感を内側に向ける
 
この中で③Asanaだけが”ヨガ”と思われがちですね。
でも、ヨガのレッスンに参加すると、呼吸に意識を向けることも同様に大事だと気づきます。また、姿勢を整えようとすると自然と身体の内側に意識が向くので、3つの要素は切っても切り離せない関係です。
 
【ヨガの極みに達する3つの段階】
⑥Dharana(集中)…concentration 意識を特定のものに留めること。
⑦Dhyana(瞑想)…意識が無意識のうちに一方向に流れていく。
        仏教の禅の語源らしい。
⑧Samadhi(悟り)…神と一体になる。
 
これは、内的世界の深まりの度合いを3つの段階にわけて表したもの。わたしもトライしてみるですが、ある程度の時間、意識を集中させることだけでもかなり難しい…。
 
【まとめ】
インドに世界最大のエコヴィレッジ
オーロヴィルに来る前はずっと不思議に思っていました。
 
しかし学んでいくと、ヒンドゥー教やヨガの思想が生活に深く根付いているインドだからこそ、オーロヴィルは発展できたのだと確信。
 
ヒンドゥー教の思想に特徴的なのが「自分の行いは未来の自分、他者、そして社会に影響を与えている」という考え方。
 
人類が限りある資源に依存して、際限なく使い漁り、枯渇させてようやく気づいた当たり前のことを、ヒンドゥー教は何千年も前から説いていた。
 
豊かで、先進的な思想をもった国だと感じる。
面白いわ、インド。やっぱ大好き。絶対また来るぞ。
 
(追記)旅で出会った日本人 ゆりさんからオーロヴィルの設立、発展は60年代〜70年代に盛んだったカウンターカルチャー、ヒッピー文化との関連していることを指摘された。間違いない。すっかりその視点を見落としていた。カウンターカルチャーの起こった時代背景を踏まえた上で、オーロヴィルの存在を改めて考えてみよう。